循環

 

誰かに 教わるでもなく
知っていた 嘘のつき方
体のなかで蠢く畜生どもなど
笑顔で塗り潰せばいい

どれだけ 透き通ってみえる
ひと掬いの水でも
一滴の絵の具が垂らされていると
知ればもう 飲めやしない

絵の具まみれの 体じゃ
あなたのもとへ ゆけない

欠けだらけの心
あなたが触れたところから
血が流れて みたしてゆく
だれにも汚されることのない
あなたの血が


毎日を ただただ浪費して
うすい靄のなかに生きる
わたしに流れる血は
誰の血だ どこから流れる

こびりついた絵の具
その手が触れたところから
赤く赤く染まってゆく
ひとつも汚されることのない
あなたの血で


どれだけ 不幸ぶってみても
あなたは 救い出してしまうね


欠けだらけの心
あなたが触れたところから
血が流れて みたしてゆく
誰にも汚されない あなたの血が
あなたの血が

他の誰のためでもなく
あなたがわたしのために流した
血が巡り つくりかえてゆく
この体にも流れている

誰にも汚されることのない
ひとつも汚されることのない…

 

ほしがり

お金はできればたくさんほしい
生きるにはとにかく金がいる
すてきな洋服たくさんほしい
いくつになっても美しいままでいたい

おうちもできればいつかはほしい
読谷あたりに広い庭付き猫10匹
猫だけじゃなくて犬もほしい
もふもふに囲まれた生活

ほしい ほしい ほしいものばかり
満ちてはすぐに足りなくなる

慰めるより慰められたい
理解するより理解されたい
愛するより愛されたなら
いつかはすべて満たされるのか


つらいときは慰めがほしい
人生楽しいことばかりではない
世界で一番愛してほしい
朝から晩まで私のことだけ考えて

ほしい ほしい ほしいものばかり
いつかはすべてなくなるのに

慰めるより慰められたい
理解するより理解されたい
愛するより愛されたなら
いつかはすべて満たされるのか

 

お金も服も家も命すら
いつかはすべてきえてなくなる
どれだけ蓄えどれだけ積んでも
ひとつもわたしのものにはならない
最後までなくならないものはただひとつだけ
本当にほしいものはただひとつだけ

お金なんてなくてもいいよ
たったひとつ見失わないなら
素敵な服がなくてもいいの
野花は着飾らなくとも美しい
お家も雨風しのげりゃいいよ
この世はすべてあなたのものだ
長生きだってできなくていいさ
ここより素敵な場所があるのを知ってるから


慰められるより慰めるほうがいい
理解されるより理解する人になりたい
愛されるより愛したいのです
与えるからこそ与えられるのです

 

灯火

 

頭の中ではね いつだって無敵さ
言葉は体から離れた途端 知らん顔するの

でもあなたの言葉だけは いつだって正しい
ただあなたの言葉だけが いつまでも色褪せない

 

僕はいつもでもそう 間違えてばかりさ
命ひとつじゃ多分 答え合わせもなしに終わる

でもあなたの言葉だけは 教えてくれるの
ただあなたの言葉だけが 僕の道しるべ

 

 

パズル


パズルみたいに

すべてがぴたりと填まる時がくる



生まれるのに時があり 死ぬのに時がある

植えるのに時があり 引き抜くのに時がある

崩すのに時があり 建てるのに時がある

殺すのに時があり 癒すのにも時がある


泣くのに時があり 微笑むのに時がある

嘆くのに時があり 踊るのに時がある


神さまのなさることは

時にかなって美しいらしい

いつか その頭の片隅にひっかかるまで

今は 耳から耳を抜けるだけの詩の連なりでも

いつか その心のあいた隙間に

ぴたりと填まる 時がくるかしら



捜すのに時があり 失うのに時がある

守るのに時があり 投げ出すのに時がある

石を集めるのに時があり 石を投げ捨てるのにも時がある

黙ってるのにも時があり 話すのにも時がある


引き裂くのに時があり 縫い合わせるのに時がある

抱きしめるのに時があり それをやめるにも時がある


神さまのなさることは

時にかなって美しいらしい

いつか その頭の片隅にひっかかるまで

今は あなたの求めるものがただの容れ物でも

いつか答え合わせをする時がくるまで

わたしは歌うよ



戦うのに時があり 仲直りの時がある

憎むのに時があり 愛するのに時がある


神さまのなさることは

時にかなって美しいのよ

いつか その頭の片隅にひっかかるまで

今は 耳から耳を抜けるだけの

詩の連なりにしかすぎないのかもしれないけど

いつか その心のあいた隙間に

ぴたりと填まる 時がくるでしょう


神さまのなさることは

時にかなって美しいのよ

いつか その頭の片隅にひっかかるまで

今は あなたの求めてるものが

ただの容れ物にしかすぎないのだとしても

いつか答え合わせをする時がくるまで

わたしは歌うよ



そよ風と透明人間


はらり はらり 頬に触れる温度

思いのままに吹くそれが

何処からきて 何処へゆくのか

今日もわからないけれど


赤子のときから その手に感じた

生温さの存在を 疑ったことなど

ありませんでしょう


わたしにみえない あなた

手を伸ばしても 掴めないけれど

あなたがわたしに 触れたから

やっと見つけたの



ひゅるり ひゅるり 耳を抜ける速度

自由気ままに吹くそれが

何処からきて 何処へゆくのか

今日もわからない


わたしにみえない あなた

そこにいるのは わかってるけれど

わたしの弱い心は

あなたの僅かな息遣いも

聞こえないふりする



わたしにあなたは みえないけど

誰よりも優しい その手だけが

わたしの心をみたすこと

ほんとは知ってるの


わたしにみえない あなたを

わたしが見つけたと思ってたけど

あなたは最初からずっと

ずっとわたしのそばに

そばにいたんだね



はらり はらり 瞼撫でる温度

思いのままに吹く風は

何処からきて 何処へゆくのか

今日もわからない



満ちる



南の方からながれてくる水が

踝をこえ膝を濡らす

この川ではすべてが生きる



ひとはみんないつかしぬ

ひとはみんないつかしぬ


でもこの川ではすべてが生きる



東の方へとながれてゆく水が

ながれながれて海に注ぎ込む

この川では誰もが生きる



ひとはみんないつかしぬ

ひとはみんないつかしぬ


でもこの川ではすべてが生きる