隣人


あなたを あいしたい

私が今まで受けてきた愛をすべて

あなたに あげよう

見返りは なにもいらないから



それは

満たされない小銭入れから

二枚のコインを取り出して

お腹空かせたあの子に

パンを買ってあげること


それは

何気ない帰り道

クラスで嫌われ者のあの子と

手を繋いで帰ること


愛とは 与えること


あなたを あいしたい

すべてを信じ すべて待ち続ける愛を

あなたに あげるよ

いつまでも 消えることのない愛を



それは

むかつくあいつのことを

心から愛する人

幸せそうな笑顔を思い浮かべること


それは

私を欺く うそつきなあの人の

幸せを 願うこと


愛とは 赦すこと


あなたを あいしたい

私は全部ゆるされているから

あなたのことくらい

ゆるせるよ あいせるよ



眠れない夜くらいは

少し自分勝手でもいいよね

でも次に目が覚めたとき

あなたを愛せる私でいたい



あなたを あいしてるよ

その卑屈さも ずるさも 不器用さも

あなたの 本当だから

すべて取り払った 丸裸の

あなたを あいしてるよ

たとえ 私のこと愛してくれないとしても

あなたを あいしてるよ


いま そこで聴いてる あなたのこと

私の愛おしい となりびと



パノラマ


幼き日の 憧れの人が

いなくたって 構わないの

理由なんて ほんの

些細なことでいいの


誰かのためなんて こじつけたり

しなくたって 別にいいの

きみがきみである

それだけが理由でいいの


何も見えなくていい

見えなくても知ってるから


あの大きな手の上にあるすべてが

そのずっとずっとずっとずっと

上から見る目には

美しく紡がれた

計画書の1ページであることを

私は知っているから

知っているから



頭の中 空のままで

かたちばかり なぞってるあの人達に

なぞらぬあなたのこと 責める権利は

どこにも どこにも ありません


ヒーローにはなれなくていい

働きアリのようでありたい


この小さな手はあまりにも無力で

目に見えるものしか

目には見えてくれないから

弱気にもなってしまったりするけど

目に見えないもので形造られた

私が 信じられなくてどうするのだろう


そのずっとずっとずっとずっと

上から見る目には

美しく紡がれた

計画書の1ページであることを

あなたが教えてくれたから大丈夫

あなたのこと信じているから大丈夫



心臓


昨日 私を包んでいた

あの すばらしい衝動は

今日になったら 遠い昔話


昨日 私と繋がっていた

あの人も あの人も

今日になったら

また違う心臓で動いてる


近づけど 近づけど あなたは遠くなる


この第一関節 第二関節

唇も呼吸器官も 全部 全部

あなたを歌う為だけにあったはずなのに

気付けばいつだって

自分を守る為の道具にしてる

こんなはずじゃないの

こんなはずじゃなかったの



昨日 私が殺そうとした

あの 甘い幻想が

今日になったら 私を満たしてる



降り積もる言葉が 私の首を絞める


この神経細胞 言語中枢

海馬も視床下部も 全部 全部 全部

あなたを思う為だけにあったはずなのに

気付けばいつだって

ここから逃げる為の覆いにしてる

だけど本当は 本当は


この交感神経 毛細血管

静脈も動脈も 全部 全部 全部 全部 全部 全部

あなたの為に動いてるの

それすらも忘れて

自分が生きる為に生きようとする私を


あなたは赦すっていうの

部 赦すっていうの



100匹目の羊


わたしは100匹目の羊

気付けば群れからはぐれちゃってる

ひとりぼっちの羊

どこでだってうまく生きられない


わたしは100匹目の羊

あなたは善良な羊飼い

干し草も寝床も

今となってはもう夢の中


自由意志を与えられた

わたしは簡単におちる 汚れる

あの素晴らしい場所から目を逸らし

ふさわしいと思い込んだ闇へおちてゆく


99匹のよい羊たちを 

あなたは放っておいて

たった一匹 はぐれたわたしを

探しに出掛けた



わたしは100匹目の羊

楽な方へ身を任せてしまう

はぐれものの羊

すぐにだめになっちゃいそうになる


どこもかしこも汚れたわたしに

あなたは眩しすぎて

逃げた先はいつでもここよりも

ずっとずっと 暗い場所


99匹のよい羊たちを

あなたは放っておいて

たった一匹 愚かなわたしを

迎えに出掛けた



よごれた自分に

安心してしまうけど

ほんとの ほんとは

美しい あなたの傍にいたいの



99匹のよい羊たちを

あなたは放っておいて

たった一匹はぐれたわたしを

探しに出掛けた


99匹迷わなかった

羊たちより あなたは

たった一匹帰ってきたわたしを

喜び 笑った


おかえりって 笑った